元皇女なのはヒミツです!
私はすっと瞳を閉じた。そして両手に魔力を灯して机の上に翳す。
滑り込めせるように魔力を落書きのみに注いで凍らせた。カチカチに凍った落書きはふわりと浮き上がり、ふっと息を吹きかけると粉々に壊れて消え去った。
机は元通りの綺麗な状態に戻った。
クラス中が息を呑む。
私は威嚇するよう真顔でぐるりと周囲を見回した。
「この魔法は私の魔力ではまだ小さな範囲のツルツルした表面にしか発揮できないけど、レベルが上がったら動物の皮を剥ぐのにも使えるらしいわ。……人間の皮にも応用できるかしらね、グレース?」と、ニコリと彼女に微笑む。
「な、なんであたしに言うのよ……!」
グレースはガタリと音を立てながら仰け反った。
私は逃すまいと彼女に詰め寄る。
「練習台になってくださる、グレース?」
「い……嫌に決まっているでしょう!? バッカじゃないの!」と、彼女はぷるぷると震えながら答えた。
「それは残念だわ。皆さんも、もし私の魔法の練習台になってくれるのなら遠慮せずに言ってくださいね?」
全員が目をそらした。そそくさと無言で授業の準備を始めている。
よし、これでしばらくは馬鹿な嫌がらせは来ないでしょうね。ゆっくり学園生活を送れるといいけど。