元皇女なのはヒミツです!
「……分かったわ」と、私は頷く。
このままここにいれば、きっと殺される可能性だってあるだろう。そうなればアレクセイさんやターニャさんを巻き込む可能性が高い。もともと処刑される予定だった自分なんかのために二人を危険に晒すわけにはいかないわ。
「済まないね、急な話で」
「ううん。いつまでも二人にお世話になっているわけにもいかないし、それにもう一年間も外出していないでしょう? さすがに飽きちゃったわ」と、私は努めて明るくケラケラと笑ってみせた。
「そうか……」アレクセイさんもふっと微笑んだ。「それで、君が向かう国なのだが、僕の遠い親戚が隣国にいるのでそちらに頼もうと――」
「ま、待って!」
ガタリと大きな音を立てて私は勢いよく立ち上がった。身体中にビリビリと電撃が走る。
私は今、重大な事実に気が付いたのだ。この国を出るということは、他国へ向かうということだ。
リーズ王国に行ける……!
にわかに顔が火照った。
夢だったリーズ王国。フレデリック様から手紙で何度も話を聞いて、憧れだった私の未来の嫁ぎ先。叶わなかった王太子妃としての新しい生活の場。
もう彼と結婚することはできないけれど、せめて一度この目でリーズ王国を見てみたい。彼が綴った自慢の国をこの脚で歩いてみたい。彼と同じ空気を感じてみたい。