元皇女なのはヒミツです!
「やぁ、やっぱりリナ嬢も代表なんだね」
「フレ――王太子殿下!」
選手の集合場所で出し抜けに思い掛けない方に声を掛けられて、私は狼狽しながらぎこちなく頭を下げた。
「ごめん、ごめん。試合前なのに緊張させちゃったね」
「い、いえ……。あの、やはり王太子殿下も出場されるのですね」
フレデリック様は昨年も一昨年も代表に選ばれていて、しかもどちらも優勝している凄腕の持ち主なのだ。
そういえば私がリーズに行ったときは一緒に狩りをしましょうね、って約束したんだっけ。まさかこんな形で実現するとはね……。
「皆、僕が王子だから気を遣ってくれてるのかな」と、フレデリック様は苦笑いをした。
「そっ、そんなことないと思います! だって、殿下は光魔法の持ち主なんですもの。代表に選ばれるのは当然ですよ!」
この世界の魔法は基本的に火、水、風、土の四大属性からの派生で、光と闇属性の使い手は滅多に現れない。その珍しさに加えて、この二つの属性の持ち主は魔力そのものも他の者より強い傾向があるのだ。
「ありがとう。実は、今年は父上に叶えてもらいたい願いがあるから絶対に優勝したいと思っているんだ。だから代表に選出されてほっとしたよ」
「えっ? 王太子殿下でもこういった機会がなければ国王陛下にお願いができないのですか?」
私は目を丸くした。
国王と王子の間柄でも肉親なのだから融通をきかせてくれたっていいと思うけど……。私やお兄様はよくお父様にお願い事をしていたわ。ま、全てが叶うわけではなかったけどね。
「う~ん……なんというか、なかなか難しい願いでね」
「そうなのですね……」
「ま、ということなので、優勝は僕がいただくよ」と、フレデリック様はニヤリと口の片端を上げた。
「それでしたら私も負けるつもりはありませんよ」と、私もニコリと微笑み返す。