元皇女なのはヒミツです!
開会式のあとは番号順に選手の紹介だ。
フレデリック様と侯爵令嬢のときは惜しみない拍手や声援が送られ、私のときは案の定ブーイングが起きた。……あら、グレースたちも堂々とそれに乗っていたわよ。やっぱりね。演技をするのなら最後まで徹底しなさいっての。
審判が定位置に立つと、ざわざわとした応援席も静まり返り、ピリリとした空気が選手たちを呑み込んだ。
もうすぐ始まる。
私も胸がドキドキと鳴り始めた。こういう大会は初めてなので、どうしても緊張してしまう。身体がどんどんカチコチになっていくのを感じだ。
ま、不味いわ。どうにかして緊張を解さないと……。
ふと前方から視線を感じると、フレデリック様が笑顔でこちらを見ていた。目が合うと、彼は口を開いた。
リ、ラッ、ク、ス。
遠くで声は聞こえなかったけど、唇の動きでそう言っていると確信した。
私は大きく深呼吸してからフレデリック様にに向けて頷く。彼も頷き返した。途端に気持ちが和らいだ気がした。
よし、やれるわ。