元皇女なのはヒミツです!
気が付くと、いつの間にかセルゲイが三人の背後に立っていた。激しい怒りを押さえ付けているような歪んだ笑みを浮かべている。
「げっ! 帝国人!」
三人は驚きのあまり揃って仰け反った。
「レ……レディーの話を盗み聞きするなんて、最低!」と、グレースが非難する。
「なにが最低だよ。お前たちのほうがコソコソコソコソ卑劣な手を使って最低だろうが。大会を中止にまで追いやってどうするつもりだ!」
「はあぁっ!? あたしたちが使ったのは魔獣を引き寄せる薬だけで、大会を中止になんてしていないわ!」
「そうよ! 他は関係ないわ!」
「言い掛かりもいいところ!」
「……やっぱりお前らがリナに嫌がらせをしてたんじゃないか! ふざけるなっ!」
セルゲイが指を鳴らすと、ぼうぼうと燃え盛る炎の獅子が飛び出した。
「オオォォォォォォォォッ!!」
「「「きゃあぁぁぁっ!!」」」
グレースたちは炎の獅子の迫力に怯んで後退りする。火の粉がバチリと弾けて舞い上がった。
「さぁ、お前らもリナの気持ちを存分に味わえ」
「ひ……卑怯よ! あたしたちを殺す気!?」
「お前らが先にリナを殺そうとしたんだろうが!」
「ガアァァァァァッ!!」
炎の獅子がグレースたちに飛び掛かった。
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」」」
三人は飛び上がる。獅子が威嚇するように吠える。その勢いで炎が弾け飛んだ。
「きゃあっ! あたしの髪がぁっ!」
運悪く炎に当たったグレースご自慢の縦ロールがジュッと焦げた。
「て、帝国人~~~っ! 絶対に許さないんだからあぁぁぁっ!!」
「おう、無事に逃げ延びたらいつだって相手になってやるよ。お前らが生きていたらな」
「オオォォォォォォォォッ!!」
「「「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」」」
三人は全速力で遁走した。
「安心しろ! 5分もすれば消えるから、それまでせいぜい頑張れよーっ!」
「ふざけないでよっ!」
「覚えてなさいっ!」
「セルゲイ、あとで殺すっ!」
「ガアァァァァァッ!!」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」」」