たとえ君の記憶がなくなっても。
「ごめんなさい。私はあなたのこと好きじゃないから」
「本当にそう言って振るんだ」
「どういうこと?」
「誰がどんな台詞、どんなシチュエーションで告白してもその言葉で振るって噂だよ」
「じゃあなんで告白したの?」
「俺なら小林さんの気持ちを変えられる自信があるから」
そこで一息吐いてからユイトくんは言う。
「一ヶ月でいい。俺と仮交際しようよ。その一ヶ月で俺を好きにさせる自信があるんだ」
「私は……たとえ仮でも誰とも付きうつもりはないの」
『付き合ってはならない』
目まぐるしい速さで脳裏を駆けていく言葉。
「とりあえずやってみない? 一ヶ月で好きにならなかったら俺のこときっぱり振っていいからさ」
ユイトくんの目は真っ直ぐに突き刺さり、断れない雰囲気が漂う。
「分かった」
気づくとユイトくんの強引さに負け頷いていた。
一ヶ月後に振ればいいだけだ。
「本当? ありがとう。じゃあこれからよろしくね!」
こうして私たちの一ヶ月の仮交際が始まった。