出戻り王女の恋愛事情〜人質ライフは意外と楽しい
「王都に行き、陛下に此度の件を詳らかに伝えたら、あなたとのことも話すつもりだ。あなたと、俺の間に何があったか、俺があなたをどう想い、あなたが俺にどう応えたか」
「はい」
彼の緊張がジゼルにも伝わり、唾を呑み込む。
一度嫁いで出戻って来た身としては、新しい恋人のことを話すのは、親を安心させたいという気持ち半分、気恥ずかしさ半分だった。
「人質」として見送った娘が、まさかその相手と親交を深め、只ならぬ仲になったと知れば、目を丸くして仰天するだろう。
それでも、ジゼルが自ら見つけた幸せを、家族は認めて応援してくれると信じている。
「だが、その前にもう一度確認しておきたい。きっと向こうに着いたら、俺たちはずっと一緒にいられないだろう」
ジゼルがユリウスと共に王宮に入ったら、きっと彼女は母や弟たちに、王宮の奥へ連れて行かれるだろう。
ユリウスはそこに立ち入ることは出来ない。
そしていくらボルトレフとエレトリカ国との関係が特殊で、普段は対等だとしても、今回はボルトレフの方の分が悪い。
悪くすれば、到着するやいなや、拘束されるかも知れない。
「私も出来ることは何でもします」
「ありがとう」
力強くジゼルが言うと、ユリウスの顔に笑みが垣間見えた。
しかし、すぐに真顔になり、ジゼルの前に片膝を突いて見上げた。
「ユリウス、ど…」
「ジゼル・ベルガルド殿下」
ユリウスがいつにも増して、重苦しくジゼルの名を口にする。
「あなたと俺の間に起こったことは、単なる気まぐれでも、その場の雰囲気に流されたものでもない。些か十代の少年のように、浮かれていたことは認めるが」
月が出ているとは言え、夜のことなのですぐに近くに顔があっても、昼間のように表情の機微を見て取れるわけではない。
けれど、ユリウスの顔は明らかに照れているのか、肌の色が赤く色づいている気がする。
「私も…男女の…その…体の関係について、知りたいという欲求はありました。あれは、強要されたわけではなく、私自身も望んだことです。あなたになら、身を委ねてもいいと、そう思ったから…」
ジゼルの言葉を聞いて、ユリウスの口角が僅かに上がる。
「もし許されるなら…いや、一度目で許されなくても、何度も許しを請う。だから、俺を信じてこの先の時を共に過ごしてほしい」
「え……」
彼の言葉に含まれている意味を、ジゼルは悟った。
「次にここに来る時は、ジゼル・ベルガルドではなく、ジゼル・ボルトレフとして戻ってきてほしい」
ユリウスが恭しくジゼルの手を取り、そして熱い目で彼女を見上げる。
「愛している。あなたしか考えられない。どうか俺の妻になってほしい」
「ユリウス」
ジゼルの鼓動が瞬時に跳ね上がり、歓びが体中を駆け巡った。言葉が喉に詰まって、何も言えなくなり、ただ瞳を潤ませ激しく首を上下に振った。
「…しも、私も…愛しています。私の…夫になってくれますか?」
自分の手を掴む彼の手をギュッ握り返し、膝を折って彼と目線を合わせる。
風が優しく吹いて、雪晶花やジゼルの髪を揺らす。
「望むところだ」
流れた涙で顔に貼り付いた髪をそっと取り払い、ユリウスは顔を近づけ震える唇を、その唇で覆った。
ユリウスの腕がジゼルの背中を撫で、ぐっと自分に引き寄せた。
二人の体が隙間なくピタリと寄り添い、互いの熱を分け合いながら、貪るように口づけを交わした。
ジゼルの唇を割って、ユリウスの肉厚な舌が口腔内を余すところなく蹂躙する。
どれほどの時間が経ったのか、唇が離れ熱で潤んだ瞳でユリウスを見つめ、ジゼルは幸福で胸がいっぱいになった。
「あなたがほしい。もっとあなたを知りたい。あなたとひとつになりたい」
欲望に燃えるユリウスの赤い瞳が、ジゼルに請う。
「……あなたは?」
直接的な欲望を曝け出した言葉に、ジゼルは身を震わせた。
「そ、そんな…そんなこと…」
恥ずかしさに視線を彷徨わせ、ジゼルは言い澱む。
「恥ずかしがる必要はない。欲望は誰にでもある。男だけでなく女にも。俺は、言いたいことを言うし、やりたいようにする。今この瞬間、あなたがほしいと思う。あなたは、俺がほしくないか?」
ジゼルの手を掴み、自分の胸からお腹、そして昂ぶる下半身へと沿わせていく。
その熱と硬さに触れ、ジゼルの体に彼との一夜に感じた快楽が蘇る。
「……あなたが…ほしい」
消え入りそうな声で、思わず呟いた。
「はい」
彼の緊張がジゼルにも伝わり、唾を呑み込む。
一度嫁いで出戻って来た身としては、新しい恋人のことを話すのは、親を安心させたいという気持ち半分、気恥ずかしさ半分だった。
「人質」として見送った娘が、まさかその相手と親交を深め、只ならぬ仲になったと知れば、目を丸くして仰天するだろう。
それでも、ジゼルが自ら見つけた幸せを、家族は認めて応援してくれると信じている。
「だが、その前にもう一度確認しておきたい。きっと向こうに着いたら、俺たちはずっと一緒にいられないだろう」
ジゼルがユリウスと共に王宮に入ったら、きっと彼女は母や弟たちに、王宮の奥へ連れて行かれるだろう。
ユリウスはそこに立ち入ることは出来ない。
そしていくらボルトレフとエレトリカ国との関係が特殊で、普段は対等だとしても、今回はボルトレフの方の分が悪い。
悪くすれば、到着するやいなや、拘束されるかも知れない。
「私も出来ることは何でもします」
「ありがとう」
力強くジゼルが言うと、ユリウスの顔に笑みが垣間見えた。
しかし、すぐに真顔になり、ジゼルの前に片膝を突いて見上げた。
「ユリウス、ど…」
「ジゼル・ベルガルド殿下」
ユリウスがいつにも増して、重苦しくジゼルの名を口にする。
「あなたと俺の間に起こったことは、単なる気まぐれでも、その場の雰囲気に流されたものでもない。些か十代の少年のように、浮かれていたことは認めるが」
月が出ているとは言え、夜のことなのですぐに近くに顔があっても、昼間のように表情の機微を見て取れるわけではない。
けれど、ユリウスの顔は明らかに照れているのか、肌の色が赤く色づいている気がする。
「私も…男女の…その…体の関係について、知りたいという欲求はありました。あれは、強要されたわけではなく、私自身も望んだことです。あなたになら、身を委ねてもいいと、そう思ったから…」
ジゼルの言葉を聞いて、ユリウスの口角が僅かに上がる。
「もし許されるなら…いや、一度目で許されなくても、何度も許しを請う。だから、俺を信じてこの先の時を共に過ごしてほしい」
「え……」
彼の言葉に含まれている意味を、ジゼルは悟った。
「次にここに来る時は、ジゼル・ベルガルドではなく、ジゼル・ボルトレフとして戻ってきてほしい」
ユリウスが恭しくジゼルの手を取り、そして熱い目で彼女を見上げる。
「愛している。あなたしか考えられない。どうか俺の妻になってほしい」
「ユリウス」
ジゼルの鼓動が瞬時に跳ね上がり、歓びが体中を駆け巡った。言葉が喉に詰まって、何も言えなくなり、ただ瞳を潤ませ激しく首を上下に振った。
「…しも、私も…愛しています。私の…夫になってくれますか?」
自分の手を掴む彼の手をギュッ握り返し、膝を折って彼と目線を合わせる。
風が優しく吹いて、雪晶花やジゼルの髪を揺らす。
「望むところだ」
流れた涙で顔に貼り付いた髪をそっと取り払い、ユリウスは顔を近づけ震える唇を、その唇で覆った。
ユリウスの腕がジゼルの背中を撫で、ぐっと自分に引き寄せた。
二人の体が隙間なくピタリと寄り添い、互いの熱を分け合いながら、貪るように口づけを交わした。
ジゼルの唇を割って、ユリウスの肉厚な舌が口腔内を余すところなく蹂躙する。
どれほどの時間が経ったのか、唇が離れ熱で潤んだ瞳でユリウスを見つめ、ジゼルは幸福で胸がいっぱいになった。
「あなたがほしい。もっとあなたを知りたい。あなたとひとつになりたい」
欲望に燃えるユリウスの赤い瞳が、ジゼルに請う。
「……あなたは?」
直接的な欲望を曝け出した言葉に、ジゼルは身を震わせた。
「そ、そんな…そんなこと…」
恥ずかしさに視線を彷徨わせ、ジゼルは言い澱む。
「恥ずかしがる必要はない。欲望は誰にでもある。男だけでなく女にも。俺は、言いたいことを言うし、やりたいようにする。今この瞬間、あなたがほしいと思う。あなたは、俺がほしくないか?」
ジゼルの手を掴み、自分の胸からお腹、そして昂ぶる下半身へと沿わせていく。
その熱と硬さに触れ、ジゼルの体に彼との一夜に感じた快楽が蘇る。
「……あなたが…ほしい」
消え入りそうな声で、思わず呟いた。