【完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです

おまけ アンリ様……私、欲しいものがあるんです

 冬のある晴れた日のこと──。

 エリーヌは「ある用事」のためにアンリの部屋を訪れていた。

(今日は確か、アンリ様はお仕事がお休みって言ってたはず)

 エリーヌは扉のドアノブに手をかけた。
 が、その手をすっと引いて考え込む。

(でも、「あの事」を言ったら、嫌われちゃうかもしれない……)

 彼女は部屋に入ろうかと思っては引いて、思っては引いてを繰り返した。

(いや、頑張って言ってみよう)

 エリーヌは思い切って、扉を開いた。

「アンリ様、いらっしゃいますか?」
「ああ。大丈夫だよ、どうしたの?」

 アンリは文献を読み込んでいたようで、その本から目を離してエリーヌに微笑んだ。
 休みの日でも研究熱心な彼は、崩れ落ちそうなほど机に本を積み上げている。
 顔をあげたアンリの元へ、エリーヌがゆっくりと近づいていく。

「どうしたの!? 具合が悪いの!?」

 アンリが勢いよく立ち上がった。
 どうやら珍しく背中を丸め気味にゆっくりと歩いて浮かない顔をしているエリーヌを心配したようだ。
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