【完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです

第17話 屋敷の監視人(1)

 本格的な暑さに突入してきた頃、エリーヌとアンリは木陰で座りながら朝食をとっていた。
 小さな木のローテーブルには、この地方での伝統工芸である『シュラース』という技法で編み込まれた竹のカゴがおかれている。
 中には夏野菜とミートソースのサンドイッチに、スクランブルエッグを挟んだロールパンなど。
 お供には桃のジュースがグラスに注がれており、エリーヌは一口飲んで顔を綻ばせる。

「やっぱり美味しいですね、この地方の野菜や果物は」
「ああ、それは俺も思う。ここは土壌も豊かだし、人々の気質も穏やかだが努力家が多く、いいものへの探求心が強いからな」
「頑張り屋さんということですね」
「そうかもしれないな」

 この地方の工芸品について饒舌に、そして楽しそうに話すアンリを見つめてくすりと笑う。

「どうかしたか?」
「ふふ、いえ。本当にアンリ様はここの皆のことを愛していらっしゃるのだな、と」
「あ、あ、愛してる!? いや、別に、そんな愛してる……」

 そんな簡単に愛してるなんて言葉が出るのか、なんて小声で言ったが彼女の耳には届いていない。
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