【完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです
「冷茶というんです。この地方ではよく飲まれています。貴族の間ではあまり広まっていませんが、庶民の方々はよく飲むそうです」
「すごい……! なんだかまた違った味わいがしますね。それに飲みやすいです!」
「ふふ、お口にあったようでよかった」

 ようやくエリーヌは少し落ち着いて心に余裕が出てきたようで、部屋を改めて見渡してみる。
 濃いブラウン基調で家具は統一されており、この部屋自体はそこまで広くはない。
 しかし、洗練された美術品や家具がおかれており、絵画がよく見受けられた。

「珍しいですか?」
「ええ、アンリ様のお部屋と少し似ていますが、美術品が多いですね。お好きなのですか?」
「はい、元々絵が好きで……ですが、その夢は諦めました」
「え……」

 少し冷たく言い放たれた言葉とは裏腹に、彼の表情は曇ることなく笑顔のまま。
 なんとなく聞きづらい雰囲気ではあったが、エリーヌは慎重に事情を伺ってみた。

「ご事情が、何かあったのですか……?」
「色が見えなくなったのです」
「え?」
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