【完結】婚約破棄されて嫁いだ先の旦那様は、結婚翌日に私が妻だと気づいたようです
「兄さんはその一か月後、裏庭に両親の墓を建てたそうです」
「あ……」

 エリーヌは以前裏庭に迷い込んだときに見かけた墓石を思い出す。

(あれは、お二人の両親のもの……)

 合致した情報と今しがた聞いた過去を脳内が駆け巡る。
 アンリの声が、顔がエリーヌの頭の中に思い浮かんで、そしてたまらなく彼を抱きしめたくなった。

 ルイスは深々とエリーヌに頭を下げると、悔しさを滲ませて頼む。

「どうか、どうか兄さんを救ってください。あの人は、僕の目が見えなくなったことも、両親を失ったことも自分のせいだと感じています。あの日から兄さんはこの部屋に来なくなりました。きっと、きっと僕から両親を奪ったと思っているのだと思います」

 彼ならそう考えるかもしれない、彼ならそう自分を責めても不思議でないとエリーヌも感じた。

「でも、私がどうやって」
「兄さんがこの場所に、家族よりも執着を見せたのは初めてだと思います。きっとあなたなら、兄さんを変えられる。彼の心を解き放って自由にしてあげられるはずです」

 彼はぎゅっと膝の上にある手を握り締めた。
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