【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 子猫の声を合図にぞろぞろと家の中や物陰から人が集まってきて、あっという間にロルフとニーナは囲まれてしまった。

『なんだって、ロル様が』
『まあっ。仰ってくださればお迎えにあがりましたのに! お疲れでしょう。どうぞ家の中へ』
『ロルさまぁ! この前の絵本の続き読んでえ』

(王都にいるときと雰囲気が全然違うわ)

 ニーナはロルフを取り囲む人たちの反応をみて更に驚いた。ニーナが王都でロルフに初めて会ったとき、周りの人は『極悪王子』と陰口をいい、蔑んでいた。向けられる視線は憎悪だけでそこには親しみや王族に対する敬愛のようなものは一切感じられなかった。
 けれど、今目の前にいる人たちはどうだ。ロルフに自ら近づき、親しげに声をかけ、子供たちはその足にまとわりついて鬼ごっこや絵本の読み聞かせを強請っている。

「おい、危ないから足から降りろ。絵本は新しいのを持ってきたからそれを読んでやる。それからミース、鬼ごっこはまた今度だ。おい勝手に始めるなっ」

 それになにより、ロルフの表情が柔らかい。正確にはフードを被っているので表情は口元しか分からないが、声色があきらかに違っていた。

(話の内容から、いつもロルフ様鬼ごっこや読み聞かせをしているのね、意外だわ)

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