【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
視線を合わせるため身を屈めたニーナは少年と目が合い、あっ、と声をあげる。
目の前の少年は、調香師選抜試験の日に木の上で出会った子猫だった。
『あのときの! そうだわ、ここの子だったのね! 元気で良かった……! それに、どこかで見かけたことがあると思ってたの。あなた、広場の市場でベリーの香水を買ってくれたでしょう? お母様へのプレゼントだって』
ニーナが嬉しそうに少年の頬に触れると、少年はなぜかばれたかーと苦笑した。
「えへへ……っ、お姉ちゃんの香水のおかげでいつもより元気だよ! ロル様がお薬もくれたから直ぐ良くなったんだっ! ――でも……」
『コラ! お前さんやっぱり勝手に森から出ていたんか!』
突然響いた男性の声に少年はびくりと身を縮こまらせた。
「だ、だって……」
『だってじゃない! もし誰かにこの場所がバレでもしたら……』
ただならぬ雰囲気に萎縮する少年。ニーナは口を挟まずにはいられなかった。
「あの、私この子と一緒にいたんです。私も今日までこの場所は知りませんでしたし、どこにでもいる普通の子にしか見えませんでした。それに私以外には会っていませんでしたし」