【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
朝の光が差し込む森は、眩しくて暖かい。
見上げると木々を包む葉がキラキラと風に揺れている。
まるで一匹の猫を少し戸惑いながら歓迎するように。あのときも、こんなふうに森がニーナを迎え入れてくれていた。
――手を引いてくれた彼は、あの日渡した香玉をポケットにいれて嬉しそうに笑っていた。
陽の光をたっぷり含んで揺れる髪は金色にも、虹色にもみえる美しい銀髪だった。
また忘れてしまわないようにニーナは頭の中で何度も彼を思い出す。そしてそれは必然のように目の前の男と重なっていった。
ニーナは周りに人がいないことを確認し、くるくるとその場で回ってみた。木々の中でたんぽぽ色のワンピースがふわりと舞う。
「この森は伝説の竜がつくった森ですよね」
「ああ。伝説上では白銀の竜が愛した猫のために造り上げた森と言われている」
「この森に迷い込んだ猫は歳をとらなかったとか、不治の病が治ったとか、そんな噂もありましたね」
唐突な話題にロルフは少し訝るような視線を向けたがニーナの無邪気な様子にすぐ目を優しく細めた。