【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「真偽は不明だがこの森に不思議な力があるのは事実だ。例えばこの果実や植物は他では生息していない。それに、竜族が祈りを捧げるほど森は豊かになり、自然の力と相まって農村も潤すほどの未知な力がある。この森で暮らす子供たちも悪い夢はみないと聞いた。森は竜が望む猫の幸せを実現する……すまない、これでは伝説を読み上げているだけだな」

「それは、たとえば猫の幸せのために記憶を奪うことも……あるんですよね?」

 ロルフはハッとして表情を引き締めた。この森に来てから気持ちを緩めているからだろうか、いつもより感情がはっきりしてみえる。一瞬だったが、確かにロルフは動揺した。

「……昨日のことか?」
「昨日のことも納得していません。でも、それより私はずっと忘れてたことを思い出したのです」

ニーナの新緑色の瞳はロルフから一瞬たりとも目を離さない。絶対に誤魔化されたくない。

「ロルフ様は私の初恋の方のこと、銀髪が珍しいだけっておっしゃってましたよね。私、覚えてなかったんです。彼のことで覚えていたのは蒼い瞳だけ……」
「……言い間違えだ。忘れてくれ……それ以上なにも考えないでくれ……」
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