【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「ロルフ様は私に初めて触れた時、香水ではなく私自身の香りを不思議がっていました。魔力から香るのであればロルフ様が以前仰っていたように運命だから……」
「ニーナ」

 縋るような声だ。これ以上の言葉を遮るような。けれどニーナは止めない。

「あなたは私の運命の方だったから、本能が覚えていたのではないでしょうか。だからあなたを誘う香りを私が魔力にのせていた……あなたは私の初恋の彼。お持ちですよね、十三年前にお渡しした香玉を」

 ロルフはあからさまにニーナから視線を逸らした。そして頭を抱えて俯く。
 ニーナは不安になって、抱きしめたくなるのを必死にこらえた。ロルフの言葉で真実が聞きたい。
 たとえ、貴方にとっての運命が私でなくても。
けれど、ロルフは答えてくれない。その表情はフードの中に隠れたままだ。

「……俺は、思い出してはいけないんだ。俺がそう望んだ。君を失いたくなくて。俺が君を……」
「ロルフ様。私はここにいます。あなたのいちばん大切な方にはなれなくても、ここにいます」

 ニーナは精一杯微笑んだ。ロルフの隣にいたい。その本音と、少しだけの建前。

「……君が側に……」

 ロルフはうわ言のように呟くと、フードを脱ぎ胸ポケットから小さな包みを取り出した。
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