【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
淡い黄金色の香水をロルフにしゅっと吹きかける。それは、太陽の香りだった。
 大好きな人と木の上で日向ぼっこをしていて、抱き合った時に溢れるような愛しい香り。

「……っ、……はっ……」

 苦しみに朦朧としていた彼の表情は一瞬穏やかになった。けれど。

「ぅ、ぁああっ……!」
「ロルフ様!」

 突然目を見開いて苦しみだしたのだ。まるで内側からこじ開けられているかのように自身を抱え込んだロルフを強い風が攫うように包み込んだ。ニーナは無意識にロルフを離すまいと抱きしめていた。強風に煽られ目を固く瞑る。眩い光に照らされて、恐る恐る瞼を開く。

「ロルフ……様……?」

 抱いていたはずの体温が感じられなくなり、代わりにひんやりとした硬質なものに触れている。ニーナは目の前の光景に言葉を失った。

 柔らかな陽の光を泳がせ、虹色に輝く白銀の鱗。研ぎ澄まされた刃のように鋭い爪、どこまでも飛んでいけそうで神秘的な勇ましさを感じさせる翼。そして、深い空のように凛々しい碧眼。
 その姿は紛うことなく、白銀の竜そのものだった。
 ニーナは目の前の竜がロルフであることがすぐに理解できた。そしてこれが、ロルフの本当の姿であることも。

「ロルフ様……っ、すごい、本当に……っ」

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