【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「お前、そんなことよりミカエルを見なかった? 今日まだ一度も顔を見ていないの。もうこんな時間だというのに」
王妃は視線を切なげに落とす。こんな時間とはいってもまだ昼前で、成人した王太子の姿が見えないのを心配するような時間ではない気がする。ニーナが見かけていないことを伝えると王妃は「使えない子ね」と吐き捨てて王の寝室に閉じこもってしまった。
「国王様、王妃様……」
重圧な扉の前で立ちすくむニーナに咳払いと迷いのない声が返された。
「……私には小娘の香水など不要だ。私は王妃以外には会わぬ。二度と私の寝室を訪れるな。次はない」
初めて耳にした声は扉越しにもはっきりと響いた。
部屋の前に控える従者に走った緊張感にその声の主が国王であることを認識させられる。
ニーナも項に冷たい汗が伝うのが分かった。けれどここで怖じ気付いてはいられないと、何とか声を振り絞る。
「差し出がましいようですが、この香水はロルフ様が陛下のために考案されたレシピです。ロルフ様は陛下のご体調を心配されて……」
「黙れ小娘! 彼奴の名前など聞きとうないわ!」
びくっとニーナは言葉を飲み込んだ。怒鳴り声の後、噎せるような咳が扉越しに響く。追いかけて王妃が寄り添うような声が聞こえてくる。
王妃は視線を切なげに落とす。こんな時間とはいってもまだ昼前で、成人した王太子の姿が見えないのを心配するような時間ではない気がする。ニーナが見かけていないことを伝えると王妃は「使えない子ね」と吐き捨てて王の寝室に閉じこもってしまった。
「国王様、王妃様……」
重圧な扉の前で立ちすくむニーナに咳払いと迷いのない声が返された。
「……私には小娘の香水など不要だ。私は王妃以外には会わぬ。二度と私の寝室を訪れるな。次はない」
初めて耳にした声は扉越しにもはっきりと響いた。
部屋の前に控える従者に走った緊張感にその声の主が国王であることを認識させられる。
ニーナも項に冷たい汗が伝うのが分かった。けれどここで怖じ気付いてはいられないと、何とか声を振り絞る。
「差し出がましいようですが、この香水はロルフ様が陛下のために考案されたレシピです。ロルフ様は陛下のご体調を心配されて……」
「黙れ小娘! 彼奴の名前など聞きとうないわ!」
びくっとニーナは言葉を飲み込んだ。怒鳴り声の後、噎せるような咳が扉越しに響く。追いかけて王妃が寄り添うような声が聞こえてくる。