【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
うっとり、とミカエルを見つめる王妃の目にニーナは逸らしたくなる感情を覚えた。あの目には見覚えがあった。そうだ、父を見る時の継母の視線にそっくりなのだ。
一方、ミカエルはニーナと同じ気持ちのようで王妃の視線と腕を自然に振りほどいて凛とした姿勢になおる。

「心配しなくても大丈夫ですよ。父はきっと、良くなります。薬でも香水でも、隣国からも輸入させているのでしょう? 隣国の新種の植物は気から来る病に大変よく効くとか。僕も母上の従者と共に手配を手伝いますよ」

ミカエルの言葉に王妃の目の色が変わった。甘い視線を逸らし、べったり張り付けたような笑みを浮かべる。

「ああミカエル……なんて優しい心を持っているのでしょう。気持ちは嬉しいわ。でも旦那様のことは私がやりたいの。だから、貴方は貴方のお仕事を……それから、万が一の時に私を支える準備をしていてくれたらいいわ」

そう言い残すと、王妃はまた王の寝室へ戻っていった。
ニーナは結局、国王に香水を渡せないままミカエルに促されその場を後にした。
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