【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
一見、大きな薔薇に見える深紅の花は身を守るように鋭いトゲに囲まれていて、檻の中心で一本だけ美しく咲いている。その花弁からは濃すぎるほどの甘く芳醇な香りが漂っていて、ずっと嗅いでいると頭がくらくらしてくるような気がする。
ニーナは思わずその花に手を伸ばした。これだけ香りが強いのだから花びらの先端だけでもいい。嗅いだことのない香りなら、きっとなにか新しいヒントになるはず。
「ニーナ……? ニーナだめっ、その花は……!」
リリィが止める声がした気がするけれど、指は茨の奥に潜り込んだ。
時間がない。なにかヒントを掴んで、答えを導き出さないと。やっと掴めた彼の手が離れてしまう。
なぜか、握っていた母の手が滑り落ちる瞬間が蘇る。あんな悲しみを味わうのはいや。
私はもう、大切な人を失いたくない。
「ニーナ。止まってくれ。綺麗な指が爛れてしまう」
瞬間、後ろから抱き締められ、茨の中の指を絡め取られた。よく知った指の感触に振り返ると白銀の髪が視界で煌めく。
「ロルフ様……っ」
ニーナは思わずその花に手を伸ばした。これだけ香りが強いのだから花びらの先端だけでもいい。嗅いだことのない香りなら、きっとなにか新しいヒントになるはず。
「ニーナ……? ニーナだめっ、その花は……!」
リリィが止める声がした気がするけれど、指は茨の奥に潜り込んだ。
時間がない。なにかヒントを掴んで、答えを導き出さないと。やっと掴めた彼の手が離れてしまう。
なぜか、握っていた母の手が滑り落ちる瞬間が蘇る。あんな悲しみを味わうのはいや。
私はもう、大切な人を失いたくない。
「ニーナ。止まってくれ。綺麗な指が爛れてしまう」
瞬間、後ろから抱き締められ、茨の中の指を絡め取られた。よく知った指の感触に振り返ると白銀の髪が視界で煌めく。
「ロルフ様……っ」