【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
『おいっ、むやみに動くな! そのまま俺に向かって真っ直ぐ飛び降りろ!』
そう、ニーナに向かって両手を広げて受け止める準備をしてくれていた。母以外に手を差し伸べられたのはあの時が初めてだったニーナは驚いたけれど、恐怖からやはり動けなかった。
そこで少年は怒るでも諦めるわけでもなくただ『俺を信じて』と腕を伸ばし続けてくれた。そんな彼の思いに引かれるように、ニーナは飛び降りて、無事に彼が受け止めてくれたのだ。
名も知らない彼はニーナを抱きしめるとほっとした顔で『君はお日様の香りがする』って笑ったのだ。今思えば、もうあの瞬間に恋をしていたのかもしれない。
そしてそれから彼に会うためにニーナは森へ通った。
一緒に日向ぼっこをしたり、果実を食べたり、雲を眺めたり。
特に会話をしたわけではないけれど、ただ隣で過ごすことがどんなことよりも楽しく、心地よかった。
そんなある日、いつもより少し早く森にはいると彼は声一つ漏らさずに木の上で膝を抱えて泣いていた。
――泣かないで。
そう手を伸ばすと彼は慌てて顔を上げて涙をなかったことにした。
なんでもないことのように遠くを見つめる彼に胸が痛んだ。
そう、ニーナに向かって両手を広げて受け止める準備をしてくれていた。母以外に手を差し伸べられたのはあの時が初めてだったニーナは驚いたけれど、恐怖からやはり動けなかった。
そこで少年は怒るでも諦めるわけでもなくただ『俺を信じて』と腕を伸ばし続けてくれた。そんな彼の思いに引かれるように、ニーナは飛び降りて、無事に彼が受け止めてくれたのだ。
名も知らない彼はニーナを抱きしめるとほっとした顔で『君はお日様の香りがする』って笑ったのだ。今思えば、もうあの瞬間に恋をしていたのかもしれない。
そしてそれから彼に会うためにニーナは森へ通った。
一緒に日向ぼっこをしたり、果実を食べたり、雲を眺めたり。
特に会話をしたわけではないけれど、ただ隣で過ごすことがどんなことよりも楽しく、心地よかった。
そんなある日、いつもより少し早く森にはいると彼は声一つ漏らさずに木の上で膝を抱えて泣いていた。
――泣かないで。
そう手を伸ばすと彼は慌てて顔を上げて涙をなかったことにした。
なんでもないことのように遠くを見つめる彼に胸が痛んだ。