【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
『ねえ、いつか俺が空につれていってやる』
『え? 空に? あなた空が飛べるの!?』
『今はまだ飛べないんだ。だけど君が一緒にきてくれるなら飛べる気がする』
『すてき! そうしたら一緒に雲の香りも空の香りも嗅いでみましょう! そしてあなたの好きな香りを全部全部いれるの! 約束よっ、ね?』
『うん。約束する。俺が君を空に連れて行く……楽しみだな』

 ニーナははしゃいで彼の手をとった。彼は目の端を赤くして無邪気に笑い返してくれた。
 いつかの日がくることはなかったけれど、ニーナはこの日の約束を胸に今日まで生きてきた。生活が苦しいときも、母が亡くなったときも、継母に意地悪をされるときも、他人から不義の子と嘲笑されるときも。どんなことがあっても胸にこの約束があるから生きてこられたのだ。
そして今ロルフは十三年前の約束まで果たしてくれたのだ。

 取り戻した記憶を、ニーナは懐かしみロルフに語った。

「本当に幸せな日々でした……ロルフ様はずっと、覚えていらっしゃったのですね」
「……ああ。忘れた日などなかったよ。俺は君に救われたんだから」

 そういうとロルフ半身を起き上がらせ、ニーナを自らの膝の上にのせた。
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