【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 ぶわっと竜巻のような強風が吹き荒れた。竜の翼が強風を起こしたのだ。それは馬に乗っていた男達が軽々と飛ばされるようなもので、ニーナもロルフが支えていてくれなかったら塵のように飛ばされただろう。

 集団になったところで竜と猫では圧倒的に力の差がある。その証拠に筆頭の男以外はロルフの姿におののき、腰を抜かしている者さえいる。竜の牙と翼の前ではどんな鎧も剣も役に立たないと本能が悟るからだ。

 ロルフとしてもニーナの前で血を流す気はないのだろう。牽制だけで済むのならと蒼い瞳を鋭く光らせ蒼い雷のような魔力を纏う。

 だが、王妃の従者は笑った。これを待っていたと言わんばかりに。

『な、なんだあの竜は!? ミカエル様でも国王様でもないぞ!』
『こ、これは一体どういうことです!? 緊急の集まりだと言われてきてみれば……!』

 その声に振り返るとどこからか現れた男が立っていた。それに続いてどんどん人が集まってくる。
 まずいと気付いたのが遅かった。あっという間に大勢の人に囲まれてしまう。
 突如現れた白銀の竜を訝り、恐れているのはどうみても一般市民だ。なかには騒ぎに便乗したのであろうこ子供までみえる。

(これでは迂闊に手をだせない……!)

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