【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 従者達の狙いはこれだったのだ。ロルフが一般市民に対して手を出せないのを知っているからこそ、関係のない人たちを集めて人質にしているのだ。
 従者はしてやったと言わんばかりの声を張り上げて民衆に告げた。

『皆の衆! これはあの極悪人である第二王子だ! 持たざる者でありながら禁術を使ってこのような姿で我々の前に現れたのだ……!』

 民衆を取り囲む困惑が一瞬にして怒りに変わり、顔つきが変わる。

『なんだと!? あの極悪王子なのか!?』
『この国をどうする気なの! ようやく赤い満月の夜を迎えてあの恐ろしい日々から解放されると思っていたのに……!』
『ああっ……終わりじゃ。わしらのウィルデン王国は終わりじゃ……』
『あの竜、猫を人質にとってるぞ!? おい誰か助けてやれ!』
『やっちまえ! みんなで力を合わせれば竜とだって戦える! オレたちには騎士様たちだってついてる!』

 わあっと盛り上がりを見せる老若男女は叫ぶように第二王子を罵った。
 白銀の竜に向けて石や鈍器が飛ばされる。なかには騎士が貸したらしい矢まであった。ロルフは前足にニーナを抱え逞しい翼を盾にしてその攻撃をかわしている。攻撃する様子は微塵もみせない。

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