【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「やめて……! これはロルフ様の本当の姿なの……! 悪いのはこの人じゃないの! お願い話を聞いて……!」

 猫族同士であれば聞こえるであろう声で叫んでいるのに、誰一人耳をかしてくれない。

 最初から、ずっと最初から王妃たちの目的はこれだったんだ。
 赤い満月の夜に民衆の積もった怒りをロルフにぶつけさせる。ロルフの呪いが解けていなければそのまま民衆の前で罪を償う、とでも言わせて呪いによって命を落とし、万が一呪いが解けてもこうして民衆に悪役退治をさせればいい。
 今までの、生きる意味を見失い、死を受け入れる準備をしていたロルフであれば残される国民のために悪役を演じて自害すらしてみせただろう。

 ロルフの優しさを逆手に取った非道だ。なぜここまでされなければならないのだろう。
 もし本当に極悪人であれば今この場で爪と牙を使ってしまえば誰一人残らなくなることくらい自分ですら分かるのにと、ニーナは怒りに肩を振るわせた。

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