【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 その光景は民衆達の頭を冷やすのに十分だった。目の前にいるのは本当に極悪王子なのか。
 そもそも、極悪王子なんてものが本当にいるのか。どうして、この竜は一切自分たちに攻撃してこなかったのか。猫はなにを訴えていたのか。
 全員が揃って血の気のひいた顔になる。

 ぶわっと風が吹いて降り立ったのは黄金色の竜だった。
 竜はすぐに人の姿になるとニーナを抱いて蹲るロルフの肩を掴む。

「遅かったか……! おいっ、ロルフ! 急いで城へ戻れ! どんでもない事実が……!」

 ロルフはその手を力強く叩き落とした。
 ニーナははっと目を覚ます。そして矢が射貫いた場所にそっとロルフの手を当てさせた。
 ニーナに傷はひとつもついていない。ロルフのくれた首飾りがその矢を寸前で食い止めていたのだ。

「……ロルフ様、大丈夫ですから……聞いてください」

 そのときようやく碧眼と目が合った。大丈夫。そう頷いてニーナはロルフにしか聞こえない声でそっと微笑んだ。そしてミカエルの言うとおり、集まった民衆を引き連れて城へと向かった。


 ニーナは城へ向かう途中に直ぐに終わらせると言って、ロルフが信用できる医者へと預けられた。
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