【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 ロルフは眉間に皺を寄せた。隣に立ったミカエルもやはりと言った顔でその光景に目をやった。
 王の寝室の窓は閉ざされ、鼻を摘まみたくなるほど濃い匂いが充満している。薔薇を長時間毒で煮込んだような刺激臭だ。光の届かない寝室は薄暗く、とても長い間病を患っている王がいるような場所とは思えない。
 燭台の微かな明かりだけがぼんやりと豪華な寝台を照らしていた。そのなかで眠るのは白骨化した王だった。予想していたとはいえ目を背けたくなるような酷い光景だ。
 ロルフは王の手の中になにかが握られているのに気づき、それを手に取った。

「……香水、か?」

 それは香水瓶で、中には血のように赤い液体が入っている。刺激臭の根源はこれなのだ。

「汚い手で触らないでちょうだい!! それは私からミカエルへの愛なのよ!!」

 拘束された状態で怒り狂ったかと思えば、王妃はうっとりとした目で香水瓶を見つめミカエルに向き直る。

「王は私の真実の愛のために尊い犠牲となってくださったのよ……! あれには《愛》が必要だったんですもの……! こんな姿になってもまだ私を愛していてくれるの。これは私からあなたへの気持ちよミカエル……!」

「……気色悪い」

 ミカエルの舌打ち混じりの声に放った言葉に王妃は言葉を失う。

< 193 / 204 >

この作品をシェア

pagetop