【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 それに、王妃は愛の香水を所望している。もし、王妃の専属になれれば母の形見の《真実の愛》をつくることができるかもしれない。
ニーナは震える手を胸の前で強く握りしめる。

「では、第一試験、調香テストを始める!」

進行役が高々に宣言し、第一試験が幕を開けた。

 まず、テーブルの上に三つの小瓶が用意された。
 一見どれも同じ液体が入っていて、蓋もしっかり閉まっている。

「それらの三つの小瓶にはそれぞれ違う香料が入っている。なんの香りが入っているのか手元の用紙に記入し、提出しなさい。――始め!」

開始の合図とともに各自が一斉に瓶の蓋を開けた音が会場に響く。ニーナも小瓶を開け、手で仰いで香りを探る。

 ――甘い……それでいてゴージャスな香しさがあるわ。……花というより果実……チェリー?

ニーナは目を瞑ってもう一度ゆっくり吸い込んだ。そしてやはりチェリーだと確信する。それもただのチェリーではない、神々の森に生息する特別なチェリーだ。

 ――あぶない。一瞬花の香りかと思った。こんな一般に出回っていない代物を使うなんて……。

ウィルデン国を囲う神々の森は、その名の通り神力の宿る花や果実が採取できる。
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