【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「不義の子ですって……!?」
悲鳴のような声が上がり、会場内のざわつきは一瞬で静まり返る。声の主はあろうことか王妃だった。
王妃はニーナを一瞥し嫌悪感をあらわにする。
まるで汚物を見るような目で少しでもニーナから遠ざかろうと座ったまま身を引いた。
そしてはらはらと涙を零し始めたのだ。
「なんて汚らわしいの……私が欲しいのは美しい愛の香水よ。美しく、純粋で、本物でなければならないの。それなのに……」
ニーナは突然の展開に狼狽えながら弁解を測ろうとその場に膝をつく。
「お、王妃様っ、それはただの噂でございます! 私の母は不義など――私は不義の子ではございません……!」
だが、必死の弁解も王妃には届かない。
「出てお行きなさい」
「王妃様――」
「お前ひとりのせいでこの試験を台無しにしたいの? お前は不合格です。汚らわしく可哀想な不義の――」
ニーナが不義の子であることがよほどショックだったらしく、王妃は側近に支えられながら罵る。
もう聞きたくない。絶望が迫りくるなか、抑揚のない声が王妃の言葉を遮った。
「なら、あの不合格の者は俺がいただいても構わないでしょうか」