【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
「別に、あなたに会いたくて来たわけではありません」
「だが、現に君は俺のもとに帰ってきてくれた」
なぜか嬉しげに蒼い瞳を細める男からニーナは絆されまいと目を反らす。
「りょ、両親に挨拶もしていませんので今日のところは……」
「ああ。君の両親へ従者に使いを頼んだ。支度金を渡したら快諾だったそうだ。なんでも隣国に移住するだとか……」
ああ。あの父と継母ならやりそうだと思った。
支度金を受け取って上機嫌に準備する姿が目に浮かぶ。もう気分次第で殴られずに済むのは嬉しいが、母の疑惑を晴らしていないのにいなくなれると思うと納得いかない。ますます《真実の愛》の香水を完成させなければという思いになる。
「っ、なにより、私は試験に不合格でした。それなのにこんな……許されるのですか」
試験の意味が無いのだから、許されるはずがない。まるで不正だとやるせないニーナは自分を見下ろす男をにらみつける。
意外なことに、男はニーナの視線を素直に受け止め、目を伏せた。
「……君には悪いが表向きは愛人に見せかけておく必要があるだろう」
そして、ニーナの栗色の髪をひと房すくい、恭しく口付ける。
「だが、現に君は俺のもとに帰ってきてくれた」
なぜか嬉しげに蒼い瞳を細める男からニーナは絆されまいと目を反らす。
「りょ、両親に挨拶もしていませんので今日のところは……」
「ああ。君の両親へ従者に使いを頼んだ。支度金を渡したら快諾だったそうだ。なんでも隣国に移住するだとか……」
ああ。あの父と継母ならやりそうだと思った。
支度金を受け取って上機嫌に準備する姿が目に浮かぶ。もう気分次第で殴られずに済むのは嬉しいが、母の疑惑を晴らしていないのにいなくなれると思うと納得いかない。ますます《真実の愛》の香水を完成させなければという思いになる。
「っ、なにより、私は試験に不合格でした。それなのにこんな……許されるのですか」
試験の意味が無いのだから、許されるはずがない。まるで不正だとやるせないニーナは自分を見下ろす男をにらみつける。
意外なことに、男はニーナの視線を素直に受け止め、目を伏せた。
「……君には悪いが表向きは愛人に見せかけておく必要があるだろう」
そして、ニーナの栗色の髪をひと房すくい、恭しく口付ける。