【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
 やはり怒っているらしいロルフも膝を突きニーナを腕の中に抱え込み強く力を込めた。ぎゅうっと押しつぶされそうなほどで苦しい。

「ロ、ロルフ様……」
「俺から逃げるなんて許さないといったはずだ」

低い声にニーナはびくりと体を強ばらせた。恐る恐るロルフの顔を伺うと、そこには声とは裏腹に切なげで苦しそうな表情があった。ニーナは思わず新緑色の瞳をぱちくりとさせる。
男はそんなニーナの視線を避けるように細い体を草の上に押し倒した。
両手を地面に押し付けられて、グッと力が込められる。

「どうしたら君は俺のそばにいる? 本当に愛人にでもすればいいのか?」

ガラス張りの天井から反射した光で男の表情はみえないが、その口調から様子がおかしいのは理解出来る。
昨日からロルフの態度がおかしい気がする。少なくとも、初めて会ったときの傲慢さが感じられずなにかに縋っているような、目の前にいるのに全く別のところをみているような気がするのだ。
ニーナは自分の存在を主張するように自分を見下ろす男に話しかける。

「逃げたわけじゃないんです。その……ロルフ様に香水をお届けする前にお伺いしたいことがあって……うろうろしていたら迷子に……」

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