【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。
ロルフの眉間がぴくりと反応した。途端に訝る様な声色になる。
「誰から聞いた?」
「ミカエル様が……確かに私はロルフ様のことをなにも存じ上げなくて――」
「ミカエル? ……アイツ……ッ、なるほど、君がこんなところにいたのはアイツが関係してるのか」
ロルフはニーナの言葉を遮り、シーツの代わりになっていた胴衣ごとニーナを担ぎあげてしまう。
「ロルフ様……!?」
王太子の名前を出した途端、ロルフの態度が急変した。ニーナはロルフの腕の中でただ狼狽する。
「なにを、どこまで聞いた?」
どこかへ向かっているのか、ロルフはニーナを抱えたまま歩き続けた。
「……赤い満月の日が近づくとロルフ様が苦しむと……そのために私の魔法香水が必要なのだと……」
「それだけか」
ニーナは頷いた。本当にそれだけだ。だからこそ、ロルフのことが知りたかった。
だが、ロルフはそれを拒むようにニーナを見つめた。重なった視線が切なげでなぜかこちらまで胸が苦しくなってくる。ロルフは時折こうして感情の読めない表情をするのだ。
「……君には知られたくなかった」