baby’s breath(眠れる森の王子は人魚姫に恋をした side story)
「久保田さん、なんか今日は疲れてない?」
今日は朝から降り続く雨のせいかお客さんが少ないので、バックヤードでシルバー類を磨きながら鈴木さんが声を掛けてきた。
母に部屋へと戻れと言われたあの後、母と二人であの家を出ていくための作戦を考えていたせいですっかり眠るタイミングを逃してしまった。恐らく疲れて見えるのはきっと寝不足のせいだろう。
「ちょっと昨晩寝れなくて…。」
「何なにぃ~?彼氏とだいぶ盛り上がった感じ??」
「そっ…そんな、彼氏だなんて…。ちっ、違いますよ。」
突然の彼氏ネタに顔が赤くなる。彼氏なんていたことがない。
「そうだよ、鈴木さん。香澄ちゃんの彼氏は俺なんだから~。昨日はあの後店長と朝まで飲まされたから寝不足になるようなことできなかったもん。」
葛城くんはいつもの軽いノリで私の鈴木さんの会話に入ってきた。
「はいはい。葛城くんこれ以上久保田さんを追いかけまわすとストーカーで捕まるよぉ~。」
「俺の香澄ちゃんへの愛はストーカーよりも深いんですっ!」
「ストーカーを超えちゃダメじゃんっ!!」
二人の取り留めのないどうでも良い会話に少しだけ笑みがこぼれる。義父の暴力が増してから大学やバイトの間は母の事が心配でならず、隙を見てはメールや電話をしていた。あまりにも頻繁に連絡をしていたので、大学の友人には彼氏ができたと勘違いされたくらいだった。
「実は…。最近、母に対する義父の暴力が酷くて…。こうしている間も母が何かされていたら…と心配で。」
ポロリとこぼれてしまった悩み。お客さんも少ないし、少しだけでも話を聞いてえたら楽になれる気がしたのだ。何の解決にならなくても誰かに聞いてもらえるだけで満足だった。
「「えっ!?」」
二人は声をそろえて驚き、予想以上に真剣に話を聞いてくれた。
「二人で家を出るとなると…。やっぱ、必要なのお金じゃない?手っ取り早く稼ぐならキャバクラとか?」
「鈴木さん!香澄ちゃんに変な事を吹き込まないで!!香澄ちゃんがキャバ嬢とか俺が許さない!!」
葛城くんは大きな体に似合わず頬を膨らませて怒った表情を見せた。
「あはは、私もキャバクラは考えましたが性格的に無理そうです。なので、残念ながら地道に稼ぐしかないですね。」
「お金かぁ…。」
葛城くんはボソッと呟き、真剣に何か考えていた。鈴木さんと二人、目を合わせ何を考えているのか謎という感じであった。
「香澄ちゃん、一ついい方法を思いついたよ!俺と結婚しようよ!」
「「はぁーーーっ!?」」
思わず鈴木さんと声を上げてしまい、ホールにいたスタッフから静かにしろと注意をされた。
「俺と結婚すれば一生お金には困らないし、香澄ちゃんのお母さんごと助けてあげられるよ。何なら義理のお父さんの…」
「久保田さん騙されちゃだめよっ!28歳になって定職につかずにフラフラとアルバイトしている男に久保田さんを任せられるわけがないじゃなっ!!!!」
「鈴木さん、大丈夫です。恋愛に疎い私でも結婚だなんてちゃんと冗談だってわかってます!」
「えっ?冗談じゃないのになぁ~。俺、結構本気で香澄ちゃんの事好きだよ~。鈴木さん、ほら見て、香澄ちゃん真っ赤になってるの。めちゃくちゃ可愛くて抱きしめたい。」
葛城くんに『好きだ』と言われて嫌な気持ちになる女の子なんていないだろう。でも、私はちゃんと自分のスペックはわきまえている。どうよく見積もっても私は中の下レベルだ。葛城くんが言っている『可愛い』は全て社交辞令なのだ。
「葛城くん!久保田さんに指一本でも触ったらセクハラだからね!!!!」
「え~~~~っ」
鈴木さんに叱られてしょんぼりする葛城くんはとても可愛らしかった。
今日は朝から降り続く雨のせいかお客さんが少ないので、バックヤードでシルバー類を磨きながら鈴木さんが声を掛けてきた。
母に部屋へと戻れと言われたあの後、母と二人であの家を出ていくための作戦を考えていたせいですっかり眠るタイミングを逃してしまった。恐らく疲れて見えるのはきっと寝不足のせいだろう。
「ちょっと昨晩寝れなくて…。」
「何なにぃ~?彼氏とだいぶ盛り上がった感じ??」
「そっ…そんな、彼氏だなんて…。ちっ、違いますよ。」
突然の彼氏ネタに顔が赤くなる。彼氏なんていたことがない。
「そうだよ、鈴木さん。香澄ちゃんの彼氏は俺なんだから~。昨日はあの後店長と朝まで飲まされたから寝不足になるようなことできなかったもん。」
葛城くんはいつもの軽いノリで私の鈴木さんの会話に入ってきた。
「はいはい。葛城くんこれ以上久保田さんを追いかけまわすとストーカーで捕まるよぉ~。」
「俺の香澄ちゃんへの愛はストーカーよりも深いんですっ!」
「ストーカーを超えちゃダメじゃんっ!!」
二人の取り留めのないどうでも良い会話に少しだけ笑みがこぼれる。義父の暴力が増してから大学やバイトの間は母の事が心配でならず、隙を見てはメールや電話をしていた。あまりにも頻繁に連絡をしていたので、大学の友人には彼氏ができたと勘違いされたくらいだった。
「実は…。最近、母に対する義父の暴力が酷くて…。こうしている間も母が何かされていたら…と心配で。」
ポロリとこぼれてしまった悩み。お客さんも少ないし、少しだけでも話を聞いてえたら楽になれる気がしたのだ。何の解決にならなくても誰かに聞いてもらえるだけで満足だった。
「「えっ!?」」
二人は声をそろえて驚き、予想以上に真剣に話を聞いてくれた。
「二人で家を出るとなると…。やっぱ、必要なのお金じゃない?手っ取り早く稼ぐならキャバクラとか?」
「鈴木さん!香澄ちゃんに変な事を吹き込まないで!!香澄ちゃんがキャバ嬢とか俺が許さない!!」
葛城くんは大きな体に似合わず頬を膨らませて怒った表情を見せた。
「あはは、私もキャバクラは考えましたが性格的に無理そうです。なので、残念ながら地道に稼ぐしかないですね。」
「お金かぁ…。」
葛城くんはボソッと呟き、真剣に何か考えていた。鈴木さんと二人、目を合わせ何を考えているのか謎という感じであった。
「香澄ちゃん、一ついい方法を思いついたよ!俺と結婚しようよ!」
「「はぁーーーっ!?」」
思わず鈴木さんと声を上げてしまい、ホールにいたスタッフから静かにしろと注意をされた。
「俺と結婚すれば一生お金には困らないし、香澄ちゃんのお母さんごと助けてあげられるよ。何なら義理のお父さんの…」
「久保田さん騙されちゃだめよっ!28歳になって定職につかずにフラフラとアルバイトしている男に久保田さんを任せられるわけがないじゃなっ!!!!」
「鈴木さん、大丈夫です。恋愛に疎い私でも結婚だなんてちゃんと冗談だってわかってます!」
「えっ?冗談じゃないのになぁ~。俺、結構本気で香澄ちゃんの事好きだよ~。鈴木さん、ほら見て、香澄ちゃん真っ赤になってるの。めちゃくちゃ可愛くて抱きしめたい。」
葛城くんに『好きだ』と言われて嫌な気持ちになる女の子なんていないだろう。でも、私はちゃんと自分のスペックはわきまえている。どうよく見積もっても私は中の下レベルだ。葛城くんが言っている『可愛い』は全て社交辞令なのだ。
「葛城くん!久保田さんに指一本でも触ったらセクハラだからね!!!!」
「え~~~~っ」
鈴木さんに叱られてしょんぼりする葛城くんはとても可愛らしかった。