離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
ザラに会えると思えばやっと笑顔が出るエドワードがやっとハミルトン領に到着する。すると、ジェニットが屋敷で出迎えてくれた。
「ザラは?」
開口一番にザラを所望するエドワードに、ジェニットは視線をあちこちに飛ばして気まずい空気を出す。
「こ、これをお預かりしております、陛下」
ジェニットが差し出した手紙をエドワードは即開封する。
『エド、我は昨今忙しいゆえ、王城で”待て”
ジェニットに我のことを問い詰めるのは許さん』
エドワードの顔から一切表情が抜け落ちてしまう様を、ジェニットは目撃してしまった。人はここまで落胆を表現できるものかと驚いてしまう。手紙を懐に仕舞ったエドワードが、ジェニットを睨む。
「ザラは……」
「ザラ様がお話して欲しくないとおっしゃっていたので、私の口からは何とも。申し訳ございません陛下!」
ジェニットが心底申し訳なさそうに眉を下げて、深く頭を下げる。
「なんでみんな、国で一番偉い僕より、ザラの命令の方が上なの……?」
「そ、そうですよね……でもザラ様の御意思なので言えません!」
無情を感じるエドワードであるが、それはザラという人間の真理なので覆しようもない。
エドワードとザラの命令があれば、ザラに従うのが人間というものだ。そういう風にできているとエドワードも納得してしまう。ザラには逆らえない。
「わかってないけど、わかった。王城で……待て、だね」