離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
「だーからーもうちょっと話し合おうよ、頑固なんだから」
生まれた瞬間から、二人は一時的な結婚が法律で決まっていた。幼少から、共に遊びながら二人で育ったのでお互いに何もかもよく知っている。
「頑固はそっちじゃ」
ザラがソファの縁を強く掴んで、立ち上がる仕草を見せる。エドワードはすぐに立ち上がってザラに手を差し出した。
「どうぞ、お手を」
「結構じゃ」
ザラは平衡感覚の悪い体をのっそりと持ち上げて立ち上がる。差し出した手を取ってもらえずとも、エドワードは勝手にザラの腕を握った。ザラが転ばないようにだ。
「一人で立てる。わざわざ手を引かれると窮屈じゃ」
「ザラ知ってる?
人間ってのはわざわざ窮屈でいることで、幸せを感じる生き物なんだよ?」
エドワードが優しく笑いかけるが、ザラがプイッと視線を逸らす。
「何を言ってるのかわからん。窮屈は窮屈じゃ」
エドワードが勝手に握った腕を振り払って、ザラは離縁書類をエドワードの胸に押し当てた。
エドワードに書類を握らせたザラは両手でスカートの端をすすすと持ち上げた。
「見ろ、夫様」