離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─

モミ葉生産量アップに、モミ葉香水の試作品開発と、女性への教育と椅子に座って考えるのに忙しいザラである。ザラは頭を働かすのが仕事なのであまり動かない。


だが本日のザラは、ハミルトン領の医師を訪れていた。


旅支度を急ぎ過ぎて、大事な薬を持ってくるのを忘れていたことに気がついたのだ。ジェニットに医師の居所を訪ねると、意外な答えが返ってきた。


「そなたが医師じゃったとはの、ヨハン」

「身体が大きいので意外だとよく言われます」


ジェニットの屋敷内に設けられた、診療室という名前の部屋にムキムキ眼鏡のヨハンは座っていた。


狭い診療室にヨハンの筋肉隆々の身体があると妙に狭苦しく感じてしまう。ザラは診療室で、ヨハンと膝を突き合わせて座った。
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