離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
「筋肉は農作業でついたのか?」
「それもありますが、医師として健康を突き詰めると『筋肉』と『モミ葉』に行き着くんですよ」
ものすごい脳みそ筋肉な発言と、モミ葉の落差にザラはきょとんとした。
「そなたもモミ葉愛好家か」
「ジェニット様とはついつい、モミ葉話で盛り上がってしまいますね」
ザラは結婚適齢期であろうヨハンとジェニットがモミ葉談義に夜を明かすのを想像した。二人の間に甘い空気のようなものは一切感じられなかった。あふれ出る仲良し兄妹感である。
「モミ葉は健康に良いうえに、香りも癒しの力がありまして」
ヨハンはザラにモミ葉を布教しつつ、紙に患者ザラの名前を書きこみつつ、太い指で眼鏡を押し上げて優しく微笑む。
いくつもの行為を並立できるのがムキムキのくせに器用だ。ヨハンにはムキムキと知性が同棲している。
「モミ葉を研究しておるのか?」