離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─


この診療室はモミ葉の鼻がスッとする爽やかな香りに満ちていた。部屋のあちこちに山のようにモミ葉が置かれていて、モミ葉を研究していることがすぐに伺えた。


「よくわかりましたね。モミ葉は本当に興味深くて研究がつきません。ザラ様、健康のために毎日モミ葉を食べて筋肉訓練をしてください。義足には筋肉が必要です」

「考えておこう」


筋肉とモミ葉信者のヨハンの話を流して、ザラは義足に手をかけた。本日の要件を繰り出す。


「この足の痛み止め薬を頼みたい」

「普段から痛みますか?」

「いや、たまにじゃ」


ヨハンはザラがいきなりスカートをまくりだしても少しも顔色を変えず、じっと義足を見つめた。ザラは用事を端的に示してから、足のことに触れないように話題を誘導する。

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