離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
ザラが診療室で、ヨハンと共にのんびりモミ茶をすすっていると、外が騒がしくなった。
屋敷に領民たちが駆けこんできたようで、大声を上げている。
ザラがゆっくり立ち上がると、診療室へと人がなだれ込んできた。フードを被った見慣れない人物が指先から血を流した男を背負っていた。
その後ろから一緒に走って来たらしいジェニットが声を張り上げる。
「ヨハン!大変なのジョンの指が!」
「みんな大丈夫、落ち着いて。ジョンをベッドに寝かせて」
農作業中に怪我人が出たようだ。
ヨハンは大らかな声で皆を落ち着かせて、素早く処置を行っていく。たくましい体からは想像できない繊細な作業だ。
(良い腕じゃ)
ザラはヨハンの邪魔にならないように、そっと診療室を後にした。きっとヨハンがいれば大事に至らないだろうと安心させてくれる見事な手腕だった。