離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
ザラが義足を投げつけるところから傍観していたジェニットが、ザラの頭に顎を置いてしだれかかるエドワードに声をかけた。
「見知らぬお客人様。領民を助けてくださってありがとうございます。ぜひ泊まっていってくださいね」
深く頭を下げるジェニットに、エドワードはマスクで半面を隠した顔でにこにこした。
「こやつはもう帰「お邪魔しまーす!」
元気に返事をするエドワードに、ザラはうんざりした。人の好いジェニットにつけこんで、すっかり遊んで行く気だ。
わかりやすく顔をしかめるザラを見て、ジェニットの心の乙女が反応した。
(ザラ様っていつもクールでいらっしゃるのに、あの方には義足投げてしまうほど心を許していらっしゃるのですね!)
女領主ではあるが色恋沙汰に興味津々な年ごろのジェニットは、二人の関係を妄想してむふふふしてしまうのだった。