離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─
老若男女の領民が入り乱れている夕時の食堂に、ザラがコツコツ足音を鳴らして参上する。
するとすでに着席していたジェニットが大きく手を振って、食堂の端に呼びよせた。
「ザラ様、こちらへ!」
ゆったり歩くザラの元へジェニットがお迎えにあがり、手を引いてくれる。もちろん一人で歩けるのだが、ジェニットが律儀にしてくれる介助は快いのでザラはつい受け入れてしまう。
「やあ、ザラ」
「はじめまして、アンドリュー君」
「やだな、さっき挨拶した仲でしょ?」
「食事じゃぞ?マスクはとらんのか?」
「もう先に食べたよ。アンドリュー君はマスク取らないんだ。あとであの時、顔見せて会いに来たから求婚の試練は無効とか言われると困るからね」
「そういうところはきっちりやるんじゃな」
「当然だよ」
颯爽とザラの隣に座ったアンドリュー(仮)ことエドワードは、にこにこ笑顔を絶やさず上機嫌だ。エドワードはしっかりザラの義足側である左を陣取る。
ザラは正面に座ったジェニットの隣の人物に、視線を流した。
「そなたも来ていたのか。ということは仕事じゃな」
「お久しぶりです、ザラ様」