月と太陽
青天の霹靂の出来事
信号機の歩行者に青だと知らせる音が鳴った。ひんやりと外は寒かった。車が2~3台近くを通り過ぎる。路面はうっすらと凍っていた。慎重に歩いた。結局のところ、昨日のパチンコ屋では1万円遊んで8万円戻ってくるというミラクルがおきて持っていたお金は使いきれずに余ってしまっていた。加奈子から生活費としてあてがわれていた100万は最後に美容院や脱毛エステ、ブランドの服や小物を買って、パチンコで遊んでも戻って来たため、80万円が残ってしまった。リビングのテーブルに残していた札束の帯にそっと戻した。お金をもらうより温かいごはんを一緒に食べる時間だったり、一緒に家事をする機会だったり、そんな時間が欲しかったけれど、加奈子は、会社の上司としてあっちこっちの店舗や支社に回って働くこと考えると、家のことは考えにくいのかもしれない。掃除、洗濯なんてしているところを見たことがない。ましてや料理も。冷蔵庫はあっても形だけ、ほぼ外食かお弁当やお惣菜を買って来て済ますことが多い。後半は出張だと言って他の彼氏のところにでも行っていたのかもしれないが、何で俺と結婚しなきゃいけないのかわからなかった。アクセサリーか何か物と勘違いしたのか。やっと手に入れた夫という割には大事にもされない。犬や猫よりも扱いが酷かった。お金だけ。餌を与えることもない。優しい言葉をかけるでもない。まるでスラム街に住む子どものごとく、高級な高層マンションにあてがわれても、すさんでいた家だった。時々訪れるかっぷくのいいあの刺青の男が加奈子の代わりにやって来ていたが、何しに来たかと思えば生存確認で見に来ただけだった。その報告をラインで加奈子おに送っていた。毎度ご苦労なこった。地上25階この部屋にエレベーターでやって来ては合鍵使ってやってくる。さとしは監視されてる気分だった。居心地は最悪。話しかけてくると思ったら無言で腕の脈をとる。生きていると分かったら、すぐ報告。この加奈子とひろしは一体どんな関係だったのか最後まで意味がわからなかった。そんな生活からの脱却できると思うとワクワクしてきた。足を軽やかに市役所の窓口に離婚届を提出した。