没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
プロローグ
メルゼス国の首都・アウラにある、商業地区の大通りから一本それた通りには、小さなパティスリーが建っている。
店内は瀟洒な可愛らしい飾り付けがされ、店頭に並ぶ焼き菓子や生菓子もまた、ここでしか見られないカラフルで乙女心くすぐるものばかりだ。
店内の一角にはイートインスペースが設けられていて、他の客からは見えないように間仕切りが設置され、半個室となっている。
閉店時間よりも少し前、扉に付けているドアベルがチリンチリンと音を立てた。
入ってきたのは程よく筋肉が付いた細身の青年で、その容貌は恐ろしいほど整っている。ふわふわとした白金色の髪に紺青色の瞳は切れ長で、目鼻立ちの整った華やかな容姿は見る人を引きつけるものがあった。
ドアベルの音を聞きつけた私は奥の厨房から姿を現した。
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