没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 私の年齢を知って年相応と思ってくれたならいいけど、さっきの扱いを考えるに十代の女の子だと思っていたはずだ。
 変に気まずい空気を作り出してしまったことに私は深く反省する。だけど、アル様には私の年齢を知っていてもらいたいし、嘘偽りの関係でいたくなかった。
 どうにかして話題を変えて話を逸らしたいのに何にも思い浮かばない。
 私が言葉を詰まらせていると、アル様が目を細めてこう言った。
「だけど僕からしたらシュゼット令嬢はまだまだ可愛い女の子だよ」
 アル様は私に微笑んだ。それがまた美しすぎて私は魔性に目が眩んで倒れそうになる。
「……あれ?」

 突然視界がぐらりと揺れた。本当に倒れてしまったのかと一瞬驚いたけれど、続いて身体が浮いた感覚を覚える。アル様の顔が目と鼻の先まで迫っていて、私は漸く彼の膝の上にのせられていることに気がついた。
「ええっ!?」
 私が狼狽えていると、アル様がくすくすと楽しげに笑う。
「やっぱり、シュゼット令嬢は可愛い女の子だ。膝にのせて顔を真っ赤にさせているんだから」
 アル様に可愛いと言われて嬉しいと思う気持ちと女の子ではなく、大人の女性として扱って欲しいという感情がせめぎ合う。
 私は怒るべきなのか恥ずかしがるべきなのか収集がつかなくなっていた。
 すると急に頭の中にネル君の姿が浮かぶ。
 ――もしかして、ネル君も私の膝の上にのせられてこんな気持ちだったのかしら。
 私も幼い子供扱いのようにあやされるのには納得がいかない。
 今なら膝の上にのせられたネル君の気持ちが分かるような気がした。

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