没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~

 それから余談だけれど私との婚約を解消したフィリップ様は宝物庫管理を担当している。
 連日蜂の巣をつついたような騒ぎになっている王宮の中を駆けずり回り、責任の所在を押しつけられて割を食っていると思う。
 王宮全体を管理するお父様が帰ってこられないのだから、きっと彼も伯爵家には戻れていないことだろう。
 カリナ様と盛り上げる時期に水をさされて可哀想だなと思いつつ、もしも自分がまだフィリップ様と婚約していたら大変な目に遭っていたから良かったと安堵する。
 だって、お父様が屋敷に帰ってこないだけで心配で胸が張り裂けそうになるのにそれがもう一人増えるなんて知恵熱を出しそうだ。
 今だってお父様を心配しすぎて頭が痛む気がする。

「お父様の様子を見に王宮へ行くのが一番手っ取り早いんだけど。今は厳重な警備体制が敷かれているから気軽に足は運べないだろうし……お店もあるから難しいわね」
 私が肩を竦めてみせるとラナはケーキの型を磨きながら言った。
「王宮の宝物庫から秘宝を盗み出すなんて大それたことをしたのはどこの誰なんでしょう。というか、人魚の涙を盗んだところで皆それが秘宝だって分かりますよう。まったく間抜けな物盗りがいたものですね。犯人は外国人でしょうか?」

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