没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 あとは温めておいたフライパンにバターを加えて溶かしたら、生地を流し込んで薄くなるように伸ばして焼くだけだ。これが意外と難しくて小さい頃は四苦八苦させられた。
 お玉に半分くらいの生地を掬うとフライパンへと流し込む。手際よくフライパンを回して伸ばせば、生地に気泡ができるまで暫し待つ。生地にふつふつと穴ができ、固まってきたら優しくヘラでひっくり返す。裏面も軽く火を通し終えたら四つ折りにしてお皿の上にのせていく。これでクレープはできあがり。
 別のフライパンに絞っておいたオレンジの果汁と砂糖を入れて煮詰めていき、そこに四つ折りにしたクレープを浸して少しだけ煮る。
 それをお皿に盛り付けてオレンジの果肉と生クリームを盛り付ければ完成だ。
 最後にお茶に使うお湯を沸かしているとラナが貯蔵庫から戻ってくる。

「お嬢様、在庫の確認が終わりましたよう」
「お疲れ様。今イートインスペースにエードリヒ様とネル君がいるの」
「エードリヒ様が? お会いするのは久しぶりですね。というか今は視察で国中を回られているのではなかったのですか?」
 ラナが怪訝な表情で尋ねてくるので私はことの経緯を説明する。
「――というわけなの。エードリヒ様の大好きなクレープが完成したところよ。あなたの分も作ってあるわ」
「ありがとうございます。嬉しいですよう。ささ、後は私がお茶の準備をして持って行きますのでお嬢様はイートインスペースへ向かってください」
「ありがとう。お願いするわね」

 私はエプロンを取って壁のフックに掛けると、二人がいるイートインスペースへ向かった。

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