没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「どうして子供の姿になっているのか、あなたは知っているはずだよ。彼女のお店を手伝っているのはそれと関係があるから。あと休憩時間を使ってここに来ているから仕事に支障は出ていません」
「休憩時間を使ってここに来ているのはおおよそ見当はついている。私が気になっているのは、シュゼットに真実を伝えなくて良いのかという点だ。彼女を騙して君は良心の呵責に苛まれないのか?」

 エードリヒは眉間に皺を寄せて尋ねてくる。
 ネルはその問いに何も言い返せなかった。
 騙すつもりはなかったけれど、結果的にシュゼットを騙すことになっている。このままずっと黙っていることに後ろめたさはある。

 大人であることをシュゼットに打ち明けなくてはいけない。しかしその勇気がまだネルにはないし、本当のことを話すにしてもそれは力をある程度取り戻してからだと思っている。
 ネルは膝の上に拳を置くとエードリヒを見据えた。

「……お嬢様には必ず自分から真実を伝えます」
「そうしてくれ」
 エードリヒは目を細めると頭をもたげて緩慢な動きで肘掛けに肘を置く。
「私にとってシュゼットは大切な存在だ。彼女を傷つけるなら誰であろうと許さない」
「お嬢様が婚約破棄されて大変だった時側にいなかったくせに」

 ネルが鼻を鳴らすとエードリヒが「痛い所を突いてくるな」と言って苦笑する。

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