没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「悪いけどお喋りはそこまでよ。ケーキが切り終わったから気をつけて持って行ってね」
「ありがとうございます」

 ネル君はエードリヒ様に向かって舌を出すと、私からガトーショコラがのったお盆を受け取って店内に戻っていく。
 エードリヒ様はネル君の反応に喉を鳴らして笑った。

「まったく。揶揄い甲斐のある奴だ」
「まあ、エードリヒ様ったら。小さな男の子を揶揄っちゃだめよ」
 私が腰に手を当てて眉を吊り上げるとエードリヒ様が肩を竦める。
「ああ、悪かった。……だが、一番苦労を掛けさせているのはシュゼットなんだがな」
「え?」
「いや、何でもない。気にするな」

 私はエードリヒ様の言っている意味がよく分からなくて小首を傾げる。
 気にするなと言われたら余計に気になるけれど、ラナがお菓子のことで質問しに来たのですぐにそのことは忘れてしまった。

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