没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


 翌日、開店前にエードリヒの遣いがやって来て野菜の現物が渡された。

 箱の中にはツヤツヤとしたミニトマトと細長いニンジン、色むらのない鮮やかなホウレンソウが入っていた。どれも土が綺麗に落とされていつでも調理ができるようになっている。

「立派に育った野菜ばかりでどれも美味しそう。どんな仕上がりになるのか今から作るのが楽しみだわ」
 今日のお店は比較的落ち着いているし、追加のお菓子の準備も既に終わっている。したがって私はせっせと野菜のお菓子作りに取り掛かった。

 三種類の野菜を見た瞬間、何のお菓子を作ればいいのか答えが頭の中に浮かんでいた。
 ――今回作る上で大切なのは、手が汚れない簡単に食べられるお菓子にすること。
 エードリヒによるとお菓子は庭園に設けられた休憩スペースのすぐ隣で販売される。

 バザー会場である庭園内を歩き回って疲れた貴族たちは、必ず休憩スペースに立ち寄って小休憩を取る。その隣に手軽に食べられる美味しそうなお菓子があれば小腹を満たすために買うはずだ。
「お菓子の売上はすべて慈善事業へ回される。ちょっとしたお金で自分のお腹を満たせて、寄付にも繋がるから良い気分になれるわね。野菜を使ったお菓子だから自分の身体を労ることもできる。まさに一石二鳥のお菓子だわ」

< 150 / 238 >

この作品をシェア

pagetop