没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~
私はバザー当日に色鮮やかなお菓子がずらりとテーブルに並ぶところを想像しながら、一気に作り上げた。三種類の野菜からは想像通りのお菓子ができあがる。
味に問題がないか試食していると、小走りでラナがやって来る。
「お嬢様、アル様が来られましたよう」
「え? もうそんな時間なの!?」
集中して作っていたせいで時間をまったく気にしていなかった。時計の針を確認すると既に閉店の三十分前になっている。
私は慌ててできあがったばかりのお菓子三つを皿に盛り付ける。いつもとは趣向が違うお菓子だけれど、アル様は美味しいといってくれるだろうか。
少し不安になったけれど、すぐに幸せそうにお菓子を食べるアル様が脳裏に浮かぶ。皿に盛られたお菓子を綺麗に完食した後、美味しかったと口にしてくれるアル様。その時の笑顔はいつだって溜め息が出るほど美しくて未だに慣れなかったりする。
私はアル様の笑顔が頭を過った途端、綿あめのようなふわふわとした感覚と心臓がきゅうきゅうと締め付けられる感覚を覚えて胸の上に手を置いた。